
3日目。早立ちするハイカーの朝支度の音で4時には目覚めた。雲は多かったけれど雲の合間からは明るく月が輝いているのが見えた。この時の天気は良かったけれど予報ではお昼過ぎから雨の予報が出ていた。雨に降られるのはなるべく避けたいけれど急ぐ程のルートではなかったのでのんびりと準備をする。まだ暗い中ワンダーフォーゲル部であろう学生達が準備運動をするかけ声が聴こえた。甘い物が飲みたかったのでアミノバイタルウォーターをお湯で溶かして飲む。僕は山の朝に飲むホットポカリが大好きだ。それに似てこれもまあまあいける。東の空が深い蒼から紫掛かる、次第に濃いオレンジになり強いイエローの朝日が登って来た。

僕らが出る頃にはテントが4、5張り程だった。朝日を浴びながら木道を歩く。最高に気持ちのいい時間。チングルマが沢山咲いていた。
この日は黒部ダム目掛けて下山するだけなんだけれどコースタイムは約7時間と意外と歩く事になる。

歩き始めるとすぐに黒部湖が見えた。上空にはたちまち雲が張り一気に暗くなって行く。風も強くなる。やはり予報通り雨が降るのだろう。先に進んだワンダーフォーゲル部のこの日の山行の事を思っていた。

徐々に標高が落ちていく。気が付くと耳の奥が詰まっている。つばを飲み耳を通す。次第に気温も上昇して行く。ブナ林の中をひたすら歩く。途中、見た事の無いキノコを幾つか見かけた。

9:00 平ノ小屋に着いたので小休止。不二家のネクターを見付けたので飲む。何年振りだろう。普段の生活ではこういう飲み物は殆ど飲まないのだけれど山を歩いている時は無性に飲みたくなる。まあだいたい売っているのはコーラとかポカリなんだけれどネクターを置いているというところがなんと言うか研究されているなーって思って感心した。絶対買うでしょこれは。
と、そんな事を思いながら少し休んでいると雨が降り出した。もう湖まで下りてきてしまったし。雨が降ろうが慌てる事も無いだろうなんて安心していたのだけれど、ここから黒部ダム迄の道のりが意外とハードだった...
ここには渡し船が通っている、1日に5本程対岸とを往復している。向こう側は読売新道へ繋がっている。いつか歩いてみたい道だ。

雨は降っていたものの蒸し暑く汗をかいた。途中で山肌を流れる沢があったので顔を洗い体を拭いた。とても冷たい。

セイシェルで水を汲み飲む。冷たくてとても美味しい。さっきのネクターとはまた違った心地よさだった。

途中土砂降りに見舞われて写真を撮る隙がなかったのだけれど高い梯子や写真の様な脚を滑らせたらダム湖迄落っこちてしまう様な箇所が幾つかあった。こんな所でこんなに気を使うとは思ってもいなかった。

土砂降りとここ何日かの悪天候のせいで沢の水量も非常に多く轟音を鳴らしながらとても激しく流れていた。とてもしなる橋を幾つか渡った。

平ノ小屋から3時間ちょっと歩いてロッジくろよんと言う所までやって来た。だいぶ前から僕の脚は疲労していてお腹もとても減っていた。遠くからここを目視してからは着いたら食べようと、カレーの事しか考えていなかった。
いざロッジくろよんに着くと奥に明かりは付いているものの、入り口は閉まっていた。2時間程前からカレーの事しか考えていなかったのにこれは辛かった。

となれば早くゴールの黒部ダムに着いてカレーを食べるしか無かった。ロッジくろよんからはきちんと舗装された道を歩き13:30 今回のゴールである黒部ダムに到着した。

だいぶ前から楽しみにしていたカレーも食べる事が出来、とても満足です。今回は3日間ともあまり良く無い天気予報でした。一日目の雷鳥沢だけでも堪能出来ればと出掛けたけれど、最後迄歩けて良かった。丁度一年振りの北アルプスでした。