5日目。針ノ木小屋テント場を5:20に出発した。この日から天気が崩れる予報が出ていた。未だ先はあるので出来るだけ先を急ぎたかった。翌日以降も晴れならば烏帽子小屋のテント場でテント泊が理想的だったのだけれど雨が降る予報なので野口五郎小屋を目指す事にした。ここから先は先ず船窪岳を目指す。コースタイム的に蓮華岳や北葛岳を通らないで一旦、針ノ木谷出合迄降りその後船窪岳迄登り返すルートを選択した。
緩やかな下りを早足で降りる。この日は9月24日。この辺りはもう良い色づきをしていた。鳥や鹿の声が聴こえていた。
このルートは沢沿いを歩く。下るに連れて水量が増えて来る。まだ薄ら寒かったけれど頭が痒くベトベトなので沢で頭を濯ぐ事にした。とても気持ちが良かった。これだけでも気分がリフレッシュ出来る。
ここら辺に来た所でこのルートを選択した事を少し後悔した。コースタイム的には短いルートなのだけれど沢沿いというか殆ど沢歩きの様なものだった。この日の前までは殆ど雨が降っておらず水量が少なかっただろうけれど雨が続いた後や雨の日は余り歩きたく無いルートだろう。濡れた岩に足を滑らせて2度程沢に落ちた。
流れる水はとても澄んでいて綺麗。
歩き始めて1時間半程で分岐に出た。ここから船窪岳まで登り返す。辺りが薄暗くなり他のハイカーも居ない。足もずぶ濡れだしこの時点でテンションはとても低め。
薄暗く急な樹林帯を登り終えて明るい尾根に出て一安心した。のも束の間ここからも細く急なアップダウンが続く道が連続した。足下はさらさらとした白砂。とても歩きにくかった。もう2度とこのルートは歩くまい。そう決心した瞬間だった。雨がパラパラと降りだす。
前回のハイクでも拳程の大きなキノコを見付けたけれど今回もとても大きなキノコを発見することが出来た。
不動岳に到着した。スタート時から持ってきていた行動食が少なくなってきているので大切に食べた。しかし誰も居ないトレイル。雨が降り出し気温も下がって来ていた。テンションも徐々に下がっていって寂しくなってきた。早く小屋に着きたいと先を急ぐ事にした。
歩き始めて5日目。ここまで特に故障も無く歩けて来たけれど先程沢に落ちた時に足が濡れてしまい湿ったままで歩いたために軽度の靴ズレが起きていたのが気になっていた。いつかの本で読んだけれど山では少しでも気になった箇所は気付いた時に早めのケアが大事。と言うのを僕は実践しているので今回も早めにケアをした。
不動岳を越えた辺りから本格的に降り出した。カメラをしまっていここからはiPhoneで撮影を始めた。先にも書いたのだけれど今回持ってきた行動食が残り少なくなっていた。直ぐ先の烏帽子小屋でお昼ごはんを食べて何か行動食になるものを補給したかった。
烏帽子小屋に到着。予定が外れる。シルバーウィークの為か普段は置いてカップ麺などの食料や行動食になりそうなお菓子類も全くなかった。カップコーヒーだけを注文してなけなしの行動食と一緒に味わって食べた。ここからこの日の目的地の野口五郎小屋までは3時間程。
一度歩いたことのあるルートだった。そんなに体力を消耗する道のりでも無いことを思い出しがんばって歩ききることにした。
烏帽子小屋を歩き出し更に雨と風が強まってきた。雨風にも増して空腹の為体がだんだんと冷えてきた。
それでもこの裏銀座のトレイルはとても素晴らしかった。今まで歩いてきた道の中で一番好きだ。雨天でも素晴らしいと感じられる道だ。
だんだんと薄暗くなり登山者も一人としていなかった。寂しくなりiPhoneで音楽を掛けながらたまに歌い歩いた。
何とか野口五郎小屋に着いた。とてもおもむきの有る小さな小屋だ。
玄関を開けると入口にジェットストーブが置いてあり温風が勢いよく噴出していた。ありがたかった。レインウェアとレインパンツを脱ぎ玄関の物干しに掛ける。宿泊の受付をしようとしたけれど冷え切った手では字が全く書けなかった。「まだ書けないでしょ。暖めてからでいいですよ。」と小屋の主人。温風で暖めてから受付をして部屋に案内してもらった。
この日の野口五郎小屋はとても空いていた。とても広々使わせて頂けた。濡れた行動着を脱ぎ着替える。徐々に体温が上がっていく。気持ちが良かった。濡れた衣服は乾燥室へ。食事の時間までビールを飲み地図を見て翌々日の行動ルートを今一度確認した。
この日の夕食は天ぷら定食だった。山で食べる天ぷらは初めて。とてもカリッと揚がっていておいしかった。
テレビで相撲を見て天気予報で翌日の天気を確認する。明日も一日中雨の予報だった。小屋にはとても強い雨が叩き付けている。少し気分が萎えた。
自炊室で珈琲を淹れて飲み早めに寝た。
6日目。野口五郎小屋を出発。雨は少し小降りになっていて助かった。少し歩くと水晶小屋に到着した。お菓子と珈琲を買い休んだ。この日の目的地は双六小屋。余り長い道のりでも無いので休み休みのんびり行くことにした。
黒部源流まで降りるルートを通り三俣山荘までやってきた。お腹が空いていた。早めのお昼ご飯を食べる予定だったけれど昨日の烏帽子小屋での食料が尽きていた事を思い出してた。
三俣山荘の食堂に着いた。普段はたくさんあるメニューも殆ど売り切れていたもののカレーがあった。助かった。カレーを注文して食べ食後に珈琲を注文して飲み休憩した。足元は濡れてぐちょぐちょだったけれど。
VIDEO この日は朝から沢山の雷鳥の群れを見かけた。この日だけで50羽近くは見ただろう。こんなに沢山の雷鳥を一日で見かけたのは初めてだった。雷鳥はどうやら天気が悪い日に姿を現すらしい。「雷鳥」という名もうなずける。中の方の羽はうっすらと白くなっていた。雪で覆われる頃には真っ白になってしまう。
この日の目的地双六山荘に到着した。勿論小屋泊を選択して受付を済ませた。
双六小屋は過去3回程訪れているけれど4回目にして始めての小屋泊だった。部屋はとても整い綺麗だった。個人的には山小屋は前日泊まった野口五郎小屋の様な雰囲気の方が好きだ。しかしここの小屋の設備は素晴らしい。黒部の源流が近い為か水もとても豊富。何より乾燥室が広く乾燥力が凄かった。まるでタンブラー乾燥機の中に居るようだった。びしょ濡れだった衣服は数時間でカリッカリに乾いていた。
落ち着き談話室で休む。小屋の知り合いの方にジョッキの生ビールをご馳走になって一気に飲み干した。写真は2本目。確かもう一本飲んで夕飯までに完全に酔っ払っていた。夕食までの時間は漫画を読み、過ごした。「孤高の人」をはじめて読んだ。とても面白い作品。途中夕食を挟み夕食後も読み全巻一気に読んでしまった。ストイック過ぎる主人公。ふと僕も筋トレをしたい衝動に駆られたけれど部屋に帰る頃には忘れていた。
この日の夕食は前日と同じ様な天ぷら定食だった。何だろう。山域毎にメニューが結構被っている。そういうものなのだろうか...
夜、翌日の天気予報を見る。何とか回復に向かっているとの事で一安心。翌日は槍ヶ岳を通って上高地に下りる予定だった。時間が間に合わないようだったら徳沢辺りでキャンプでもしようという計画だった。
7日目。今回のハイクの最終日。5:20に小屋を出発した。出だしは少し小雨がパラついていたけれどそれも直ぐに止んで薄日が差してきた。
この日も序盤には沢山の雷鳥の群れを見た。
左俣乗越に着いたところで地図とコースタイムをチェックするとある事に気付く。地図のコースタイムよりだいぶ早く歩いている。途中走った訳でもないのにとても速く歩いた事になる。自分ではそんな気は全くなかった。しかも体は全く疲れていなかった。直ぐにでも走り出せそうなテンション。後でもっと実感するのだけれどハイになっていたと思う。今までも山を歩いていて気持ち良い思いをしてきたけれど。
8:00 スタートした初日からずっと遠くに見えていた槍ヶ岳。「あんな所まで歩きとおせるのだろうか...」と何度不安になっただろうか。やっと着いた時は何とも言えない達成感で槍に話しかけていた。双六小屋から槍ヶ岳まで。山と高原地図のコースタイムの半分程で歩いてきてしまった。こんなに早く歩いたのは初めてだった。
山頂荘で珈琲を飲んで居る間に一気に天気が回復していた。たぶんここら辺から本格的にスイッチが入ったのだと思う。山頂から横尾まで一気に駆け下りた。今まで体験した事が無いくらいの気持ち良さを感じた。荷物は重いはずなんだけれど体はとても軽かった。一回も休憩する事なく気が付いたら横尾迄きていた。喉の渇きを感じて横尾でポカリを飲んでベンチに腰を下ろした瞬間一気に疲れを感じて体が重くなった。スイッチが切れたのを感じた。こんな体験は初めてだったので何だか不思議だった。
その後は脚が棒の様だった。
双六小屋を出発して7時間。13:20 上高地バスターミナルに到着した。干渉に浸る間もなく空腹感に襲われたのでそそくさと身支度を整えてバスターミナル内にあるレストランへ向かう。バスターターミナルの水道で頭をすすぎ足を洗ったものの足の臭いだけは取れなかった。
この後少しゆっくりして安曇野在住の
if you have の山口君に連絡を取り一緒に白骨温泉というところに行った。そのそのまま後安曇野の山口君宅に一泊させて貰い帰宅した。
今回今迄歩いた事の無い距離を歩いてみた。スタートする前迄は不安だったけれどゴールしてみて正直もう少し長く歩いてみたくなった。長い距離を歩くと色々な体験、発見がある。
また是非長い距離を歩いてみようと思う。
今年の夏の終わりから山登りにハマったつーと申します!
北ア縦走・・・カッコいい響き(笑)
いつかやってみたいですねー
来年か、再来年には槍ヶ岳に行くために今から体力作りのために登ってます(^^)v
色々参考にさせていただきます(^_^)v